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その2

東京都世田谷区 〜世田谷まちづくりセンター〜

まちづくりファンドのトップランナー、世田谷まちづくりファンドについてのレポートです。

   
 

東京都世田谷区 〜世田谷まちづくりセンター〜(2/3)

第4節 助成内容と審査方法

1 助成内容

 部門は(1)まちづくりはじめの一歩助成、(2)まちづくり活動助成、(3)まちづくりハウス設置・運営、(4)特別テーマの四つであり次のようになっている。

  1. 「はじめの一歩助成」は、地域の住みよい環境づくりを目指すグループで、これから自主的なまちづくり活動の第一歩を踏み出そうとしている、あるいはすでに活動を始めているが活動の方針や企画がまだ模索状態にある活動に対して、一年限り、一律5万円の立ち上げ資金助成を行っている。
  2. 「まちづくり活動助成」は、地域の住みよい環境づくりを目指す住民グループの様々な自主的なまちづくり活動に対して、一件あたり10〜50万円の助成を行っている。
  3. 「まちづくりハウス」への助成は世田谷まちづくりファンドの特徴である。まちづくりハウスとは、地域のまちづくり活動を技術的に支援することを目的として、地域の専門家や、まちづくりの経験豊富な住民によって運営される非営利の組織であり、端的にいうとまちづくりをテーマとした日本版NPOである。当初は概念のみでなかなか理解されなかったが、この数年間にいろいろなタイプのまちづくりハウスが出てきたため、今では役割や活動内容が具体的にわかるようになった。住民や企業だけでなく、将来自主的なまちづくりをコーディネートするこうした地域のNPOを育成することが、より重要視されるようになったため、まちづくりセンターでは助成の他に「まちづくりハウス」が地域で十分な機能を果たせるように、住民とのネットワーク作りなどもサポートしている。
  4. 「特別テーマ助成」は、毎年、あるいは数年毎に時代状況にあわせたテーマを提起してそれに沿った活動をする個人またはグループに対し、一件あたり10〜50万円の助成を行うものである。2003(平成15)年度のテーマは、「ファンドへの資金集めの企画とその実験」である。ファンドへの支援資金を集めるユニークで実現可能なアイディアを開発し、その実践企画および実験的試行を行う活動を期待している。
助成の内容
部門 はじめの一歩助成部門 まちづくり活動助成部門 まちづくりハウス設置・運営部門 特別テーマ助成部門




まちづくり活動の第1歩を踏み出そうとしている、又は活動の方針や企画が模索状態にある活動 地域の住み良い環境づくりを目指すさまざまな活動 専門的な技術や経験を生かし、まちづくり活動を支援する非営利組織「まちづくりハウス」としての活動 年度ごとのテーマに沿った活動
2003(H15)のテーマは「まちづくり活動の資金集めの企画とその実験」
助成額 一律5万円 10〜50万円 10〜100万円 0〜50万円

 

2 中立的な立場からの助成と透明な審査方法

 世田谷まちづくりファンドは募金型の公益信託であり、住民、企業、行政などの寄付金により信託財産を積み増しする仕組みになっている。単独で公益信託を設定するよりも、3者を財源とすることによりより中立的な立場で助成することが出来る。
助成先の決定方法は、広く住民に公平性や公益性を示すため出来るだけガラス張りにすることを目指して、応募者も同席の上の公開審査会で決定される。そのため助成の基準などについては要綱等では定められていない。公開審査会では、申請者がプレゼンテーションを行い、申請者とのやりとりの中で運営委員が助成先を決めていく。ファンドの中立性が確保されているかが誰にでもわかるようになっている。住民・行政・企業のいずれにも属しない中立的立場で支援するという姿勢であっても,公平に広く薄く配分すべきなのか,メリハリをつけた配分にすべきなのかについては設置当初から議論があったそうであるが、

  1. 自活できそうな団体への助成はしない
  2. 福祉分野等など他助成が適当な場合は優先度を下げる
  3. 個人や仲間同士の趣味の域を出ないような活動には遠慮いただく

という姿勢をとっており,これらの理由で不採用となった場合については公開審査会で明示している。
 運営委員会は、公益信託の受託者である信託銀行の諮問機関であり、本来ならば、信託銀行が運営委員会を選出するところである。しかし、まちづくりに関する専門的な技術や知識がないため、市民からの公募のほか、寄付者、公社などが、区民、学識経験者、行政の分野から適任者を推薦している。運営委員の任期は2年で再任の上限は2期までとなっている。

<公開審査会プログラム>

  1. 助成応募グループによる活動企画内容のプレゼンテーション
  2. 運営委員(審査員)からの質疑
  3. 第1次審査(シール貼り)…会場に貼られた各応募グループの名前が書かれた表に、各運営委員が手持ちのシールを貼っていく。この審査で5枚以上のシールが貼られたグループの助成することを決定
  4. 質疑応答・意見交換…運営委員からシールを貼った理由の説明や会場との意見交換
  5. 第2次審査(助成額の決定)…助成が決定したグループに対して各運営委員が助成額を査定し提案する。各運営委員の提案額を平均し助成額を決定する。

第5節 ファンドが生み出す交流と住民参加

1 交流によるネットワーク

 助成グループが一堂に会する機会は年に三回ある。助成決定のための公開審査会があり、助成を受けることが決まったグループは中間活動発表会と最終発表会にて報告をすることになる。これらの機会が情報交換の場となり、グループ間の交流のきっかけづくりに役立っている。
 報告会では、各グループの報告だけにとどまらずグループの活動やファンドの課題、目的をテーマに議論が交わされている。そもそもの目的である活動報告だけにとどまらずネットワーク構築という大きな収穫を得ている。実際に、こういった場の中から新たなグループが結成されて、新しい活動が興っている。ファンドは、単なる助成事業と違い、ネットワーク構築に寄与している。
最近の動きとしては、住民が主体的に運営するまちづくり交流の場「まちづくり広場」が、ファンドに関わる人達を中心に立ち上げられようとしている。
 そのほか、まちづくりファンドの一部門である「まちづくり交流部門」は、とくにグループ同士をつなぐ役割を重視して設けられており、また、個々の活動を通じて、テーマや地域で関わりのあるグループ同士が、連携して活動することは珍しくないという。世田谷のまちづくりファンドは助成グループの相互の連携にも役立っている。

2 住民参加型の運営

 助成の決定は、運営委員会が中心になって行うが、ファンド運営を区民に開かれたものにすることを目的に、運営委員会をサポートするものとして、1993(平成5)年度にファンド運営協力スタッフが公募された。その結果、20名弱の区民ボランティアで協力スタッフ会議が結成された。
 協力スタッフ会議は、運営委員やまちづくりセンターの職員とともに、ファンド運営上の問題討議のほか、発表会の企画運営、基金集めのための手作りグッズ販売やコンサートなどの活動に携わってきた。
 そして、住民活動グループとは異なる視点から、住民の意見を運営委員会に反映させる点で、また、活動を通して区民にファンドを広げるよいきっかけになるという点で、重要な役割を果たしてきた。
1997(平成9)年度、協力スタッフ会議は、まちづくり活動をしている人などが自主的に運営している「交流の場」である「まちづくり広場」へ統合され、会員も80名程度になっている。 住民に開かれたファンド運営のあり方は、初動期から一貫したものとなっており、徐々に、運営委員と区民の手にファンドが移行している。

第6節 寄付集めと運用益

1 基金設立と寄付集め

 世田谷まちづくりファンドの基金集めはどのように行ったか気になるところであるが、最初にゼロから募金型で基金を創ることは難しいので、原資は(財)世田谷区都市整備公社が3,000万円を*1出捐し基金を設定した。区民からの募金活動の中心となったのは、当初、まちづくりセンター設立を目指して活動を展開していた「まちづくりハウス運営会議」の住民グループだった。また、これらの活動を通してネットワークを広げた区民の自主的な活動グループにも寄付を呼びかけた。一般区民には、区報に掲載するとともに、ポスターやチラシを作成し、図書館や出張所など区民が多く集まる所で周知を図った。
 企業に対しては、区内の商業や工業の経営者を訪問し依頼するとともに、手紙で呼びかけて寄付を求めた。広く寄付を集めるという趣旨から、法人も個人も世田谷区内に限定しているわけではない。法人の寄付額は、一口5万円で、これまで世田谷区に関わりの深い企業が中心となって寄せられている。2002(平成14)年、大きな額の法人からの寄付が一件あるが、これは土地区画整理事業の組合が解散したことによる事業費の余剰金を寄付したものである。個人にしても、法人にしても寄付者の名前は一切公表はしてない。
 このファンドは1993(H5)年4月30日、「特定公益信託」として都知事より認可され、これにより、企業からの寄付金が非課税(限度あり)となり、資金提供が容易になった。ただし、「認定特定公益信託」ではないので、個人には非課税の適用はない。

2 運 用 益

公益信託の場合、基金の運用益から信託報酬(信託銀行事務経費)や運営委員会開催費を引いた額が助成の対象になる。世田谷まちづくりファンドの場合、運用益(50〜70万円/年)は信託報酬よりも少額であるため、ファンド全体の収支は実質的にマイナスとなっており、原資が取り崩されている。現在は,年度助成支出額相当分を都市整備公社予算から支出し、公社に区がほぼ同額の事業補助をしている状況だということである。

年 度 年度末
基金累計額
公社出捐金
(円)
寄   付
金   額 件   数
合計 個人 法人 個人 法人
設 定 時 30,000,000 30,000,000          
平成4・5年度 63,884,238 21,500,000 11,982,657 4,722,735 7,259,922 484 253
平成 6年度 108,317,586 40,000,000 4,281,994 971,994 3,310,000 132 21
平成 7年度 121,369,343 10,000,000 2,483,839 703,639 1,760,000 65 7
平成 8年度 129,402,029 5,000,000 2,731,757 766,757 1,965,000 89 17
平成 9年度 130,958,381 0 1,919,286 897,666 1,021,620 90 7
平成10年度 132,585,650 0 1,684,880 794,680 890,000 89 9
平成11年度 133,825,413 0 1,486,652 626,652 860,000 77 6
平成12年度 135,801,821 0 2,187,438 1,337,438 850,000 72 5
平成13年度 138,420,032 0 1,518,702 988,124 528,578 43 4
平成14年度 138,513,425 0 1,500,839 481,824 1,019,015 44 1
合  計   108,500,000 31,755,844 12,291,509 19,464,135 1,185 330
※各年度末基金累積額は、事業経費や利子を含むため、公社出捐金と寄付金の合計とは異なる。

<世田谷まちづくりファンドの概要>
名  称 公益信託世田谷まちづくりファンド
契約時期 1992年12月1日
委 託 者 (財)世田谷区都市整備公社
設定契約 世田谷区からの拠出
信託財産 3000万円(当初)、1億3317万6430円(99年12月末現在)
助成事業
  1. まちづくり活動の調査研究を行うものへの助成
  2. 地域の環境の保全、改善等のまちづくり活動の企画または提案づくりを行うものへの助成
  3. 地域の環境の保全、改善等のまちづくり活動を実践するものへの助成
  4. 住民主体のまちづくり活動を専門的立場から継続的に援助する団体への助成
  5. まちづくり活動を行うもの相互間の交流、情報交換等への助成
  6. その他目的を達成するために必要な事項への助成
助成対象
  • 世田谷区内を舞台とした活動
  • 3人以上の構成員であること
  • 代表者が区内在住、在勤、在学

 

第7節 助成グループ

 世田谷まちづくりファンドは、そのシミュレーションである「まちづくり活動企画コンペ」を含め、1992(平成4)年から、2003(平成15)年度まで延べ276グループに助成をしてきた。ここではこれまでに助成を受けたグループの中からいくつか事例をご紹介する。

















部門別助成 助成額(万円) 活 動 エ リ ア






 







































































活動企画コンペ
平成4年度
35 13   13           7〜 10             6 1 4  1 0 1
第1回
平成5年度
25 15   9  5 1       8〜 40 24〜 80 50      3 1 4 2  0 5
第2回
平成6年度
19 13   9 3  1       10〜 45 50〜 80 50      2  4 2  2  0  3
第3回
平成7年度
18 14   9 3 2       7〜 50 80〜 90 30〜 80      3  1 2 1 1 6
第4回
平成8年度
26 22 5 12 2  3     5 10〜 45  50  25〜45      2  0 2  4 2 12
第5回
平成9年度
37 27  7 14 3  3    5 8〜 34 36〜 82 28     3 2  3  4 6 9
第6回
平成10年度
39 30 9 17 3  1    5 6〜 27 44〜 49 43      1 2  3  2  8 14
第7回
平成11年度
31 29 7 19 2 1    5 8〜 34 48〜 60 12      1 0 12  4  4 8
第8回
平成12年度
47 36 10 24 0  2     5 5〜 31  0  10〜 21      8 1  7  7  4 9
第9回
平成13年度
44 30 6 18 3 3     5 6.9〜 25.3 44.9〜49.3 7〜 28.5     6 4  6 6 3 5
第10回
平成14年度
33 24 8 18 1   1   5 10〜 39.2 44.3       30  6  5 3 5 2  3
第11回
平成15年度
34 23 7 16  0   1  5 10〜 40.3 0     40.6 10 3 2 7 0 1


合  計
 

388 278 57 176 25 17 2           51 24 50 45 30 78

 

○21F・F・G(21世紀をめざす船橋未来グループ)
 昭和30年代に建設された西経堂団地の住民グループ。最も注目すべき活動は、住宅・都市整備公団(当時)から出された建替案に対し住民案をつくったことである。これが公団に受け入れられて住民の意向が反映された建て替えが実現した(ただし、住民案をつくった1992(平成4)年度の活動は「ファンド助成ではなく、そのシミュレーション時の助成)。
 「21F・F・G」は64万円の助成を受けるとともに、まちづくりセンターから依頼された専門家やセンター職員の協力を得て、「緑の宝マップ」や「おじいちゃんおばあちゃん居住マップ」、「人気ポイントマップ」などをつくってまちを再確認し、それをもとに子どもも一緒になって模型をつくりながら住民案をまとめていった。
 ファンド助成では、93年度には工事の際に切られた木に対して「木霊まつり」を行うとともに木工作品をつくったり、横浜県民の森、大田区のくさっばら公園、世田谷プレーパークに数トン単位で頒布したりした。
 94年度も助成を受けて活動していたが、団地内を通る道路の交通親制(両方通行か一方通行か)で周辺住民と意見が対立していることを報告会で訴えた。
 このため、ファンド運営委員や他の活動グループなどの有志が客観的な事実を知ってもらおうと、団地住民も周辺住民も同席する交通計画の勉強会を開催した。このことは、まちづくりにおいては助成だけでは限界があり、ファンドのように運営上の工夫をしてネットワークを形成することの重要性を示した出来事である。

○梅ヶ丘まちづくりハウス
 このまちづくりハウスは、世田谷で約20年間、自主保育の活動を続けてきた矢郷恵子さんのネットワークを活かし、住み手に配慮した家づくりや商店と住民のふれあいを支援するためにつくられた。
 94年はまちづくり活動助成を受け、95年にハウスへと発展した。
99年には商店主らまちの人が講師となるタウンカレッジを開催するとともに、商店街の中に拠点を設け、より地域に密着した取り組みを進めようとしている。

○フリースペース“egg(たまご)”
 今のまちには中学生、高校生の居場所がない、だから10代のたまり場をつくろうと高校の先生や保健婦さんなどが始めた活動。拠点としてアパートを借り、中高生と大人が一緒になって田植えツアーやフリーマーケットなどを行ったり、10代の視点から情報を集め、まち歩きマップを作ったりしている。
 94年に20万円、95年に25万円の助成を受けている。
HANDS世田谷
 障害者と介助者のグループが、だれもが使いやすいまちをつくろうと、94年度は助成を受けて外出マップ作成のために施設や店舗、
交通機関などの調査を行った。
 95年度も引き続き助成を受けて外出ガイドづくりに取り組むとともに、区内の障害者・高齢者・まちづくりの団体に呼びかけて、27団体が参加する「世田谷福祉のまちづくりネットワーク」を結成。
このネットワークは、区が策定作業中の「世田谷福祉のいえまち推進条例」に当事者の声を反映させるために勉強会を重ね、要望書を提出した。


 


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