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その3

東京都世田谷区 〜世田谷まちづくりセンター〜

まちづくりファンドのトップランナー、世田谷まちづくりファンドについてのレポートです。

   
 

東京都世田谷区 〜世田谷まちづくりセンター〜(3/3)

第8節 ファンドを設立するなら

1 ファンドの種別

 全国各地で何らかの社会目的のために資金を提供するシステムが多くあるが、その資金源は様々である。名称についてもファンドやトラスト、基金などと呼ばれる。制度も様々で公益信託だけでなく、財団法人設置型や条例に基づくタイプもある。その中で、条例設置方式、財団法人方式、公益信託方式を比較検討してみる。

2 条例設置方式

 条例に基づく基金の場合、その根拠は地方自治法第241条に基づいて設置されている。財産の管理運営は行政が行なうため、補助金の交付を通じて、行政が主、市民団体が従という関係に陥る可能性があり、対等な関係の維持、市民活動の自立性の確保が困難である。また、地方自治法上の基金は、市の補助金交付要綱に基づく支出となるので、制約が多く、市民活動に柔軟に対応しにくくなる。しかし、この方式の場合、寄付者は寄付金控除を受けることができることがメリットである。その特徴を利用して、現行制度では寄付金控除を受けるハードルが高いNPO向けの寄付の場合、基金を通せば個人でも非課税となるように、杉並区ではNPO支援基金を設立し、福岡市でもNPO活動支援基金を設立、平成16年4月1日から運用を開始したところである。

地方自治法第241条第1項
 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立て、又は定額の資金を運用するための基金を設けることができる。

3 財団法人方式

 設立準備委員会等が公益目的に捧げられた一定の財産をもとに法人を設立する必要がある。その法人には独自の事務所と専従職員を置く必要があり、となる。理事などの役員が法人の機関として財産の管理・運営にあたり、その利子・利益にて事業資金をまかなうが、原則として基本財産の取り崩しは認められない。行政の直接の手から離れるため事業や助成の決定などについては、市民化が図られ、運営についても柔軟な対応が可能となる。設置根拠は民法34条。

民法34条
  祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得

4 公益信託方式

 信託法に基づく設置となる。運営委員会設置により、助成の決定などが第3者の手にゆだねられ、市民活動を市民が評価するシステムとなる。信託銀行が管理・運営を行うので行政に事務的負担が生じない。財団法人と異なり法人登記や事務所の設置、専任職員の配置が不要であり、コストを押さえることが出来る。また信託財産の取崩しも可能である。特定公益信託として証明を受けた場合、法人の寄付者は寄付金控除の対象となる。しかし、個人の寄付者が寄付金控除をうけるためには、認定特定公益信託としての認定を受ける必要があるが、現実的には困難である。

※信託法第66条
祭祀、宗教、慈善、学術、技能其ノ他公益ヲ目的トスル信託ハ之ヲ公益信託トシ其ノ監督ニ付テハ後6条ノ規定ヲ適用ス

5 選択のポイント

 条例に基づくファンド(基金)の場合、行政のコントロール下に陥りやすい。中立的な立場での助成制度として、よく比較されるのは公益信託と助成財団(財団法人のうち助成事業を主とするもの)である。
両者の選択のポイントは何であろうか。
第1に原資の額である。公益信託の場合の経費は信託銀行に運用益に応じた率の報酬を支払うこととなる。助成財団の場合の経費は事務所経費や人件費などがかかることとなる。そのため、原資が少額の場合は、助成財団は難しく、公益信託の方が現実的である。
第2に組織の編成である。
公益信託に関しては事務所の設置、専従職員が不要である。一方財団の場合は、事務所の設置、専従職員が必要である。そのため、公益信託の場合はわざわざ専門スタッフまでは配置しづらいが、財団の場合、拠点を設ける以上充実した組織を組みやすい。
公益信託の場合、助成の規模や内容によっては、外部の専門集団との連携も必要である。
第3は事業内容である。施設の運営など各種の事業を目的とするときは、財団法人が適当である。独立の法人格をもっていた方が事業執行が明確になるからだ。
第4は活動の期間である。財団法人は永続性を前提とするのが通常だが、公益信託の場合は比較的短期間に財産を取り崩して消費する運営が認められているので、公益活動の期間が短いときは、公益信託が適当である。

公益信託と財団法人の比較
項  目 公益信託制度 財団法人制度
根 拠 法 信託法 民法34条
設定手続 受託者(信託銀行)が行う 設立準備委員会等が行う
事務所の設置 不 要 必 要 (専任職員が必要)
事業内容
金銭給付型の公益活動に向いている
(奨学金、助成金、表彰金の給付など)
事業執行型の公益活動が可能
(美術館、図書館の運営など)
事業資金
信託財産を取り崩して事業資金に充てる事ができる 基本財産の運用による果実にて事業資金をまかない、原則として基本財産の取り崩しは認められない
事業の継続
一定期間で信託財産を費消し公益信託を終了することが認められる 永久に存続することが前提となる
決算事務等
予算書、決算書等の作成は受託者(信託銀行)が行う 財団事務局が作成する
財産の保全 主務官庁の監督がある 主務官庁の監督がある
運用収益の課税 非課税 非課税

 

6 運営形態

(1)果実運用型 「収益活用方式」
原資はそのまま確保しつつ、預金利息等の運用益を補助金の交付等に当てるもの。従来の条例設置基金に多くみられる。現在の低金利時代にあっては、果実だけによる基金の運用は、事実上困難である。

(2)順次補てん型 「事業資金寄付方式」
助成により目減りした額と同額の公費を毎年度基金へ繰り入れ(又は追加信託し)、結果として、原資の一定水位を確保するもの。財政的には実質フロー予算と同様である。
(ex.こうちNPO地域社会づくりファンド)

(3)使いきり型 「元本取崩方式」
ここ数年、地方自治体が市民活動団体への資金援助を目的として設置する公益信託方式の基金に多くみられる拠出方式。原資を毎年一定額ずつ取り崩し、助成金の交付にあてる。取り崩し額を上回る寄付金がない場合、原資は減りつづける。計画段階でおおよその年数を想定している。当面の公益市民活動への積極的支援の必要性や、助成審査の外部化等公益信託制度の現実的メリットに着目したもので基金の維持は重要視していない。今後の社会情勢に柔軟に対応できる。
(ex.青い森ファンド いわてNPO基金 那覇市NPO活動支援基金)

(4) 寄付同額繰入型
市民からの寄付と同額の公費を基金に繰り入れる方式。寄付をどれだけ集めるかが課題となる。助成額の目途が立ちにくい。
(ex.宮崎市)

7 公益信託の設立方法

公益信託に設立するにはどのような手順を踏めばよいのだろうか。設立のプロセスの概略を考えてみる。

(1)構想策定
はじめに、委託者が、公益信託の目的や事業内容の構想を策定する。

(2)受託者の選定
信託銀行だけでなく、金融制度改革によって地方銀行なども受託者となることが可能となった。複数の金融機関による共同受託も構わない。

(3)主務官庁との協議
主務官庁とは、公益信託を所管する中央省庁の権限の委任を受けたものであり都道府県知事などである。その他、受託者の間でも予算案、助成内容など決める必要がある。

(4)引受許可申請の作成と提出
受託者から主務官庁へ「公益信託引受許可申請書」を提出する。

(5)主務官庁の許可
主務官庁は受託者へ許可する。

(6)契約の締結・財産の移転
委託者と受託者は信託契約を締結し、委託者から受託者へ財産を移転する。

上記のような手続きを踏んで、正式に公益信託が設定されたことになる。

第9節 市民活動への助成を考える

1 公開性

 世田谷まちづくりファンドは助成の決定過程が透明で、市民に非常にわかりやすい。応募者の公開審査会での事業計画プレゼン時にはもちろん、助成の決定権を持つ運営委員が、それぞれどのグループに投票したかわかるようになっており、その理由についても市民と意見交換を行っている。さらに助成グループは、助成が決定した後も、計画通りに事業が進んでいるか、中間報告会と最終報告会を市民の前で行うこと
になる。このことにより、市民誰もがファンドの運営状況を認識できるようになるのみならず、助成グループは説明責任を果たすための自律心と経営性を要求される。対市民という成果報告会の形態から、事業費を有効に活用しようと経営性も生まれてくる。助成グループにしてみれば、これは相当なプレッシャーであるが、これまで市民の側であった助成グループは市民に説明をする側にまわるのである。これらのことから、有益な市民活動の助成に必要なものの一つに、高い公開性があると言えるだろう。審査や選考の過程の透明性を高く保ち、成果も大いに市民に公表する。助成成果は社会の財産として、皆に開かれた状態にしていく努力が必要である。結果的に、うまく実を結ぶに至らなくとも、その成果は貴重な財産である。

2 競争性

  世田谷まちづくりファンドの場合は応募すれば必ず助成を受けることができる制度ではない。公開審査会で助成の可否が決定されるが、創立以来、全ての応募グループに助成が決定した年度はない。これまで全体の3割程度の助成グループが、プレゼンをしたものの落選している。このことで助成を希望するグループには、より公開審査会で理解してもらおうと市民性が生まれ、「他のグループよりも」という競争性も生まれる。この、競争性に着眼して市民助成を考えてみると、募集に関しては公募がよい。助成のテーマはいろいろあろうが、それに挑戦しようと思う人誰もが応募できなければならない。わかりにくいマニアックなシステムではいけないし、権威主義的な推薦制度はふさわしくない。切磋琢磨しながら、活動への張り合いをもたらす助成システムは、市民活動にパワーを与えてくれる。

3 新陳代謝

 世田谷まちづくりファンドでは運営委員の任期は2年で2期までに限られている。このことで世田谷まちづくりファンドは常に最新の社会情勢に適応し、柔軟に対応してくることができた。運営委員のメンバーの更新がないと、自ずと長期に関わるメンバーが存在してしまい 委員の交替がやりにくくなる。助成制度は常に評価され、社会の実情に沿ったものでなくてはならない。そのためには、審査員や選考委員の交替についての取り決めも必要である。また、設立趣旨そのものも、数年に一度くらいは見直し、時代の流れにあわせて進化していかなくてはならない。必要でない時代が来
れば、なまじ存続させておくのは意味がない。そうなると原資を使い切ってしまい解散させる方がよいし、それが出来るのが公益信託である。

4 市民ファンド

世田谷まちづくりファンドの寄付状況は想像していた件数よりも少なかった。しかし、近年、ファンドは各地で注目され大きく広がりを見せている。行政も真剣に考え始めてきている。これからの市民社会においては市民にファンドという仕組みが浸透することが大切だ。また、多くの市民が共同して関わる市民活動を支援するような助成には、市民の資金が必要だ。それは、市民の資金には市民の目があるからである。
そしてよき市民の目が、よき市民活動を育む。行政と活動グループがいくら近い存在になっても、市民から離れているとよき市民社会になりえない。市民と活動グループが強くつながることがよき市民社会への近道である。 助成を求める人は多く、今後も増え続けるだろう。企業のファンドも行政のファンドも市民活動に貢献しているが、これからの時代、市民のファンドが力をつけるようになれば、市民活動もより力をもった、良質なものへと発展していくだろう。


NOW FOR FUTURE!! は福岡市職員の自主研究グループです。
Produced by NOW FOR FUTURE!! T.M